奨励会退会後、女流棋士としての活動を本格化させた里見香奈さん。ファンとしてはプロ編入試験の可能性など、今後のスケジュールが気になるところです。プロ編入試験の受験要件に「公式戦の成績(男性プロ棋士)」があるので、18年5月14日に行われた公式戦の結果を速報します。
男性プロ棋士との対戦の意味
プロ編入試験の受験要件
瀬川晶司五段とプロ編入試験
元奨励会三段で、アマチュア強豪として活躍されていた瀬川晶司さん。
将棋プロへの断ち切れない思いが募り、プロ編入試験の嘆願書を日本将棋連盟へ提出されました。
思いが叶い、プロ編入試験が行われ、最終的に合格を勝ち取られました。
現在は、将棋プロ五段として活躍されており、瀬川さんの後には今泉健司さんも続かれています。
プロ編入試験の整備
瀬川さんの件をきっかけに、奨励会以外にも将棋プロになる道が整備されました。
それが、「プロ編入試験」です。
プロ編入試験は誰でも受験できるわけではなく、2つのステップを踏む必要があります。
1つ目が「受験資格」で、以下の要件を満たすアマチュア・女流棋士です。
プロ公式戦において、最も良いところから見て10勝以上、なおかつ6割5分以上の成績を収めたアマチュア・女流棋士の希望者
出典:日本将棋連盟
受験資格を満たし、受験の申請をすると、以下の試験を受けることになります。
棋士との5番勝負(試験官は新四段5名を棋士番号順に選出)
出典:日本将棋連盟
要は、直近の三段リーグを勝ち抜いて将棋プロ(四段)になった5人を相手に勝ち越さないといけないということです。
受験資格と試験の内容を見ると、将棋プロの中に入っても勝ち越していけるくらいの実力がないと、合格は難しいことがわかります。
今後のスケジュール
将棋プロ公式戦の出場資格は?
将棋プロ公式戦には女流枠がある
里見香奈さんは、これから女流棋士として活動されていくので、将棋プロの公式戦に出るには「女流枠」を使う必要があります。
8つのタイトル戦のうち、名人戦と王将戦を除く6つのタイトル戦に「女流枠」があります。
そのほかにも非タイトル戦として7つの公式戦が将棋プロの世界にはありますが、このうち5つに「女流枠」が設けられています。
女流枠の詳細は?
「女流枠」を要約すると、以下の通りです。
タイトル戦
タイトル戦名 | 女流枠 |
竜王戦 | 4名 |
叡王戦 | 1名 |
王位戦 | 2名 |
王座戦 | 4名 |
棋王戦 | 1名 |
棋聖戦 | 2名 |
非タイトル戦
タイトル戦名 | 女流枠 |
朝日杯 | 3名 |
銀河戦 | 2名 |
NHK杯 | 1名 |
新人王戦 | 4名 |
加古川青流戦 | 2名 |
里見香奈さんの場合
女流枠に採用されるか?
「女流枠」として出場する女流棋士がどのように決められているかは不明ですが、里見香奈さんは女流タイトル6つのうち、5つを併せ持つぶっちぎりの第一人者です。
里見香奈さんを女流枠から外す理由がないので、今後、上記の公式戦にほぼ全て出場されるでしょう。
タイトル戦6つ+非タイトル戦5つの合計11局を1年間で対局できるので、勝てれば1年ほどで受験資格を満たすことができます。
スケジュール
各公式戦の予選スケジュールを元に、今後里見香奈さんが参加されるであろう公式戦のスケジュールをまとめてみました。
月 | 公式戦 |
1月 | – |
2月 | NHK杯 |
3月 | – |
4月 | – |
5月 | 棋聖戦・加古川青流戦 |
6月 | 叡王戦・朝日杯 |
7月 | 銀河戦 |
8月 | 王位戦・王座戦 |
9月 | – |
10月 | – |
11月 | 新人王戦 |
12月 | 竜王戦・棋王戦 |
公表されている公式戦対局予定
18年5月15日の時点で公表されている対局予定のうち、里見香奈さんの名前があるのは、棋聖戦の村田智弘六段戦です(時期は未定)。
その他の公式戦は、予選の組み合わせがまだ公表されていません。
結果速報
これまでの将棋プロ公式戦の成績
里見香奈さんは、これまで将棋プロの公式戦を20局戦われています。
成績は4勝16敗で、勝率.200です。
18年5月14日の結果は?
加古川清流戦と呼ばれる、プロ四段や奨励会三段・アマチュアが出場する将棋プロ公式戦に参加されました。
対戦相手は、池永天志四段で、里見香奈さんが退会することが決まった三段リーグで、将棋プロ(四段)になった方です。
対局は、里見香奈さんの先手で、両者とも飛車を横に振る「相振り飛車」と呼ばれる戦型になりました。
池永四段は、相振り飛車で一般的に用いられる「金無双」という構えを採用したのに対し、里見香奈さんは、控え室のプロ棋士曰く「見たことがない」構えを採用します。
局面は進み、池永四段が歩兵2枚を持ち駒にしたのに対して、里見香奈さんは角行を中央付近に据えて、池永陣に睨みをきかせます。
池永四段は、里見陣の王将側の端っこの歩兵を突き捨て、攻めの含みを残します。
そして、中央から戦いを起こします。
対する里見香奈さんは、池永四段の王将の頭付近に攻めの拠点を作りますが、右端の列の香車が走ってくるのを見落とされていました。
ここで形勢に差がついてしまい、その後懸命に凌ごうとしたものの、池永四段の勝利に終わりました。
対局後、里見香奈さんは以下のようにコメントされ、差がついてしまったことを悔やまれていました。
一方的(な戦い)になってしまい残念。途中でうっかりし(た手があり)、修正できなかった
出典:神戸新聞
里見香奈さんの意向
年齢制限による奨励会退会
将棋プロになるには、奨励会へ入会し、三段リーグを突破する必要があります。
里見香奈さんも将棋プロを目指して、2011年に奨励会の編入試験を受け、1級で入会しました。
最終的には、19歳の時に奨励会の最高峰である三段へ昇段しましたが、最終的には年齢制限の前に退会を余儀なくされました。
プロ編入試験を受けるのか?
奨励会退会後、動向が注目されていましたが、しばらく公の場では意向を示されていませんでした。
18年3月になって、スポーツ報知のインタビューで以下のコメントを残されました。
三段リーグにいる間も、退会した今も(編入試験について)考えたことはありません
出典:スポーツ報知
一方で、女流棋士は続けていかれるので、将来的にプロ編入試験の受験要件を満たすことも考えられます。
そこは仮定の話になるので、インタビュアーもそこまで踏み込んだインタビューはしていないと思います。
最終的にどんな道を選ばれるのかはご本人が決めることですが、ファンとしては、これからも男性棋士との対局を見続けていきたいと思います。
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