「羽生善治永世七冠と井山裕太七冠、どっちが上?」 競技が違うので徹底比較は無粋なのでしょうが、ファンならどうしても気になります。比べようがないので、残してきた実績や他の棋士との差などの「凄さ」から比較するよりありません。そこで今日は、比べようがないのを承知で、実績をはじめとする「凄さ」に絞って、徹底比較しました。
目次
羽生善治永世七冠
永世七冠って?
将棋界には現在8つのタイトルがあるのですが、8つ目の「叡王戦」は最近創設されたタイトル戦なので、永世称号があるのは現在のところ7つです。
例えば名人なら「永世名人」という感じですが、「永世〇〇」は、そのタイトルで一定の連覇・累計獲得数の条件を満たせば名乗ることが許されています。
羽生さんは、現行規定で達成可能な7つのタイトル(名人・竜王・王位・棋王・王座・王将・棋聖)全てで「永世〇〇」を達成したのです。
「永世七冠」という固有名詞はありませんが、羽生さんの快挙を讃える意味もあって、「永世七冠」と呼ばれています。
なお、永世七冠に関しての詳細は以下の関連記事で解説していますんで、参考にして下さい。
関連記事:【羽生善治】永世七冠の伝説・タイトルと名言集を大公開!棋譜や動画の検索も!
実績と凄さは?
タイトルを持っている人も挑戦する人も共にトップ棋士なので、タイトルは1度獲るだけでも大変な偉業です。
それを繰り返し成し遂げる(しかも全てのタイトルで)のは、空前絶後と言えるでしょう。
永世七冠の具体的な凄さを知るには、羽生さんの実績が他の棋士に対してどの程度上回っているかを知ることが重要です。
以下の表は、タイトル獲得経験のある現役棋士のベスト5をまとめたものです。
棋士名 | タイトル獲得数 |
羽生 善治 | 99期 |
谷川 浩司 | 27期 |
渡辺 明 | 19期 |
佐藤 康光 | 13期 |
森内 俊之 | 12期 |
いずれの棋士も時代を代表するトップ棋士ですが、2位の谷川浩司十七世名人の4倍近いタイトルを獲得していることから、「凄さ」「凄まじさ」のほどがわかります。
羽生さんのキャリアのピークはなんといっても七冠を達成した時ですが、その時の凄さについて幼少期からのライバルである森内俊之十八世名人は「神がかっていた」「何をやっても勝てないような感じ」と表現されています。
羽生さんの凄さは、「ピークの凄まじさ」の他に「ピークの長さ」もあります。
後ほど解説する井山さんも、後者について特に讃えていらっしゃいます。
現在の将棋プロ棋士に「トップは誰?」とアンケートを取れば、おそらく大半の方が「羽生さん」と答えるでしょう。
羽生さんがトップへ上り詰めたのは1990年代半ばですから、トップになってからかれこれ20年を超えているのです。
勝負の世界でこの記録は、脅威と言えるでしょう。
井山裕太七冠
2度の七冠
井山裕太さんは囲碁の世界(日本)の第一人者で、現在も他の日本国内棋士の追随を許さない実績を誇っています。
羽生さんは七冠を達成したのは一度きりで、その後六冠になることもありませんでした。
一方の井山さんの場合は、名人を奪われて七冠から後退した後、翌年まで全てのタイトルを防衛した上で名人を奪い返し、二度目の七冠を達成しました。
七冠は既に将棋界で達成されていたので、井山さんの実績をより輝かせたのは「2度の七冠」にあるとも言えます。
実績と凄さは?
井山さんはまだ20代なので、タイトルの「累計獲得数」の観点からは、羽生さんのような超絶的なレベルではまだありません。
でも「囲碁界で」と限定すると、今までのトップである趙治勲さんをほぼ視界に捉えており、抜き去るのはおそらく2018年度中でしょう。
囲碁でも、将棋と同じように現役棋士のベスト5をまとめてみました。
棋士名 | タイトル獲得数 |
趙治勲 | 42期 |
井山 裕太 | 39期 |
小林 光一 | 35期 |
張栩 | 23期 |
林海峰 | 21期 |
まだ20代の棋士がベスト5に入っているだけでも凄いのですが、タイトルの独占状況を見れば、より井山さんの凄さがわかります。
タイトルの独占状況を調べてみました。全7タイトルのうちどの程度独占しているのかを、パーセンテージで表現しています。
年度 | 独占状況 |
2009年 | 14.3% |
2010年 | 14.3% |
2011年 | 28.6% |
2012年 | 71.4% |
2013年 | 85.7% |
2014年 | 57.1% |
2015年 | 85.7% |
2016年 | 85.7% |
2017年 | 100% |
過半数を6年以上キープしているのと、1年間に開催されたタイトル戦を全て防衛・奪取している2017年度が何と言っても特筆ものです。
羽生と井山どっちが上か徹底比較
実績を比較すると?
羽生さんは井山さんよりも20歳近く年上なので、累計タイトル数で比較するのはフェアではないでしょう。
「ピークの時の実績」「ピークの長さ」という、複数軸で評価をすべきではないでしょうか。
「ピークの時の実績」で見ると、七冠を2度にわたって達成した井山さんに分があります。
一方の「ピークの長さ」で見ると、過半数のタイトルを「連続で」獲得した年数は以下の通りです。
羽生善治 | 9年連続 |
井山裕太 | 6年連続 |
井山さんは現在進行形なので決して劣っているわけではないですが、「現時点では」羽生さんに分があります。
凄さは?(結論)
他の棋士をどの程度凌駕するかが「凄さ」の意味で、感覚的な要素があります。
つまり、見る人の主観が入るのです。
その上で比較すると、「現時点では甲乙つけ難いが、今後の活躍次第では、井山さんが上回る可能性がある」が今回の記事の結論です。
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