女性で史上初めて中学生将棋名人戦で優勝した野原未蘭さん。将棋晩成塾を運営する師匠の鈴木英春さん直伝の「英春流」とはどんな将棋戦法なのでしょうか? 野原未蘭さんの棋譜や奨励会入会の可能性など、野原未蘭さんにまつわる情報をまとめました。
ブログ記事の一番最後に、記事の要約動画をアップしています。
野原未蘭さん
史上初女性で将棋中学生名人に!
野原未蘭さんは「女性史上初めて」という快挙を「中学生将棋名人戦」で達成しました。
「中学生将棋名人戦」の歴代優勝者には、名人2期を誇る丸山忠久九段や史上最年少のタイトル獲得記録を持つ屋敷伸之九段など錚々たるメンバーが名を連ねています。
野原未蘭さんの達成したことが、いかに凄いことかがわかります。
第43回中学生将棋名人戦
優勝は野原未蘭さん(富山市立岩瀬中3年)全国から集まった214名の中での優勝
大会史上初の女性中学生名人の栄冠
おめでとうございます pic.twitter.com/WqkFNot8tH— 英春流将棋 晩成塾 (@banseijuku) July 16, 2018
女流アマ名人戦で連覇!
連覇
昨年優勝した女流アマ名人戦に、
今年度も出場しました。
結果はなんと、連覇達成!
連覇を目標に今まで練習してきたので、
ホッとしています
出典:スポーツ報知
見事というほかないですが、
今大会でも英春流は炸裂したようです。
相手が対策を立てても序盤で優位に立てた。
英春流はすごいなと思いました
出典:スポーツ報知
どんな将棋だった?
先手は、初手から飛車先・角道も開けず、
後手も銀将をあげるという風変わりな立ち上がりで対局がはじまりました。
どちらが野原未蘭さんかは言わなくてもわかる出だしですが、
こんな指し回しをされたら嫌でしょうね。。。
左の銀将がくるくるまわりながら陣形が知らず知らず整えられていったのが不思議ですが、
その後、満を辞して1筋から動いて行く指し回しが印象的でした。
詳細な棋譜は【女流アマ名人戦決勝】に載っているので、
関心のある方はぜひ並べてみてください。
棋譜は?
調べた限りでは、中学生将棋名人戦の決勝の棋譜はありませんが、野原未蘭さんは女流のタイトル戦に出場されています。
「野原未蘭 棋譜」と検索すれば、2015年から2016年にかけて出場された女流王座戦の棋譜を3局見ることができます。
他の対局ではあまり見ることのない、英春流独特の指し回しがとても印象的です。
奨励会入会の可能性は?
将棋のプロ棋士や女流棋士を目指す場合は、「研修会」と呼ばれる組織に入って腕を磨きます。
そこでランキング(クラス)を上げていき、将棋プロ棋士を目指す人は「奨励会」へ入会し、要件を満たした女性は女流棋士になるパターンが一般的です。
ところが野原未蘭さんはそのいずれのレールにも乗らず、師匠の鈴木英春さんの元で腕を磨き続けています。
目指す先は「女流棋士」のようですが、女流棋士には「研修会」以外にもルートがあります。
野原未蘭さんは、その「第三のルート」を目指しているようです。
アマチュア枠として参戦する女流棋戦でベスト8に残ることで女流棋士資格を得るという前代未聞の挑戦をする。
出典:スポーツ報知
女流の将棋界では、女流のタイトル戦・公式戦にアマチュア選手が参加することも認められていて、そこでベスト8に残れば、女流棋士になれるというルールがあります。
ただ、相手はれっきとした女流のプロですし、しかもベスト8となると、周りは強豪ばかりです。
そこを狙っているとは、壮大な目標です。
しかも、王道の研修会や奨励会を通らず、師匠の鈴木英春さんの元で腕を磨き続けるという選択肢・・・。
近年見逃されがちな、アナログ的な方法の方がかえって結果を残すのかもしれません。
ちなみに、2018年のアマチュア女流名人戦を前に、
刺激を受けるニュースがありました。
アマチュアのライバルだった礒谷さんが、
先に女流プロ入りを決めたのです。
大会直前の3日、大きな刺激を受けた出来事があった。
同じアマチュアの高校2年生・礒谷真帆さんが第12期マイナビ女子オープンの本戦1回戦で、
3度のタイトル挑戦歴を誇る中村真梨花女流三段を撃破。
女流棋士の正資格である女流2級への申請資格を得る本戦ベスト8以上への進出を決めた。
「先を越されて悔しいというより、
素直にすごいなと思いました。
プロの先生を相手に間違えずにあそこまで完璧に指していたので。
真帆ちゃんの活躍は刺激になりましたし、
連覇したい気持ちは強くなりました」
今後は礒谷さん同様、規定の女流棋戦でベスト8以上に進出し、
女流棋士申請資格の取得を目指す。
「ただベスト8に残るのではなく、
自分は女流のタイトルを取れるんだ、
と思って申請したいです」。
力強く言い切った。
出典:スポーツ報知
アマチュアでこれだけ実績を残せば、
不可能ではないでしょう。
これからも、注目していきたいですね。
2019年の女流王座戦
アマチュア予選に続いて、女流棋士も交えた一次予選も突破されました。
この後、どこまで勝ち進まれるのか注目です!
【野原未蘭&松下舞琳アマが女流王座戦一次予選突破!】
✅野原未蘭
「野原未蘭の英春流はどんな将棋?棋譜や奨励会入会可能性など情報まとめ」https://t.co/e1pTZE12aA✅松下舞琳
「松下舞琳の将棋や棋譜は?今後の女流棋士の可能性と研修会へ入会は?」https://t.co/oieJl6SHJu pic.twitter.com/mFC4OIpG7O— 将棋ポケット@将棋ブログ (@shogipocket) 2019年5月11日
将棋が強い女性アマチュアは誰?
以下の記事でまとめています。
鈴木英春と将棋晩成塾
元奨励会三段でアマチュアタイトルホルダー
野原未蘭さんの大活躍で、再び脚光を浴びている鈴木英春さん。
アマチュアの世界に身を置いていますが、れっきとした元奨励会三段です。
異端「英春流」常識と定跡壊し野原未蘭さん史上初女子中学生名人導く : スポーツ報知 https://t.co/2c4LgezgCS
今NHKでやってる将棋の番組に出てくる鈴木英春さん、奨励会退会後アマに転身してついこないだ弟子が史上初の女子で中学生名人になってた。凄すぎる
— ジェネリックくま砲、(Grüne Sechzehn) (@kumakuncj) August 26, 2018
奨励会の年齢制限の壁に阻まれ、プロ入りがならなかった後、アマチュア将棋界へ活躍の場を移します。
そして、アマチュアタイトルの一つ「アマチュア王将戦」で優勝を飾ったのです。
他には類を見ない特異な戦法「英春流」を引っさげて、強敵をなぎ倒していったのです。
その後、「英春流 将棋晩成塾」を開講して更新の育成にも力を入れいています。
その門下生の一人が、野原未蘭さんです。
アマ名人戦といえば昨年は石川県代表で英春先生が代表で出場
結果だけ見ると残念な結果ではあったが出場選手中最年長や予選リーグで当たったメンバーの豪華さなどでNHKの番組や各種記事などに取り上げられていたのが印象的だったhttps://t.co/6mfXkem9de— 英春流将棋 晩成塾 (@banseijuku) September 8, 2018
英春流はどんな将棋で棋譜は?
英春流の全体像
通常の戦法とは異なる特異な指し回しが特徴です。
詳細な指し方は、「英春流かまいたち戦法」「必殺!右四間」「必殺!19手定跡」「必殺!陽動振り飛車」という4つの戦法を駆使するのが骨格です。
相手がどのような戦法でやって来ても対応できるスグレモノの戦法で、今から約20年前に出版された書籍は人気を呼びました。
通常の定跡の戦法とは異なるため、相手が今まで経験のない形で戸惑うので、一発勝負の大会では効果覿面です。
コンピューターにも理解できない
近年の将棋界では、プロ棋士も人工知能をはじめとするコンピュータの力を借りて研鑽に励んでいます。
コンピューターが一手ごとの善悪を数値にして判断する「評価値」を、プロのみならずアマチュアも参考にし始めている現代将棋。実は、英春流は初手を指した時点で「疑問手」と評価される。「コンピューターも判断できず、発想にない戦法なんです。だから勝てる。研究を尽くされることがないんです」。
出典:スポーツ報知
コンピュータが名人を凌駕してしまったことで、ややもすると「コンピュータの判断は絶対」と考えてしまいます。
そうすると逆に、コンピュータが「いい手」と評価しない指し方には、見向きもされなくなります。
ところが英春流を指すと勝てる・・・。
これが将棋の奥深さでもあります。
研究し尽くされないから、何度でも使えるのです。
英春流かまいたち戦法
対居飛車と対振り飛車の2つの指し方があります。
(対居飛車編)
飛車先を突かずに構えて、角交換を挑んで来たら桂馬で取ってしまい、将来的には右側の金将を6七に、王将を8九に構える陣形です。
(対振り飛車編)
振り飛車に対抗する一番オーソドックスな囲いである「船囲い」の構えをベースに、5筋を位取りします。
それに伴って、右の銀将を5六→6五へ進出させるとともに左の銀将も6六に据えます。
角行は後方射撃的に7七へ配置し、右の金将を6八におきます。
このような構えを取ることで、振り飛車側が陣形を発展させるのが難しくなるという点に着目した戦法です。
6五へ銀将に陣取られてしまうと、振り飛車側が高美濃囲いや銀冠の陣形へ持って行きづらくなるのです。
必殺!右四間
右四間飛車は、アマチュアの場合は特に、振り飛車居飛車問わず相手側からするとやられると嫌な戦法です。
ポイントは、左の銀将を8八へ上がっている点で、相手が角交換を求めてきたら、それを避けて6六へ上がる余地を残しています。
その後、8四に歩兵を配置して、8筋から逆襲してしまおうという魂胆です。
筆者も振り飛車をやっていたことがあるのですが、高美濃囲いや銀冠を妨害されると非常に動きにくかったのを覚えています。
必殺!19手定跡
飛車先を突かずに、右の銀将を4八から5七へ繰り出していきます。
そうすると相手は飛車先を突破してくるので、こんな局面になります。
この3三角にどう対応するかが、この戦法の眼目です。
結論から言うと、3三角に見向きもせず2一の桂馬を取ります。
後手も香車を取って駒損を回復すると、機先を制して5五に桂馬を打ちます。
これで1一の香車をゲットするのが権利になるので、先手の銀得が約束されるという戦法です。
必殺!陽動振り飛車
飛車先を突いて、相手に「居飛車」と思わせておいて、
さっと飛車を振るのを趣旨にした戦法です。
歩兵を一歩前へ進めているので、
そこを攻撃対象にさせないような差し回しが求められます。
英春流の棋譜は?
野原未蘭さんが駆使する英春流の棋譜は、
20年ほど前に販売された書籍で紹介されています。
しいてあげると中古本ですが、
そこまでやるのも気が引けます。
そんなときは、野原未蘭さんの棋譜をみましょう。
純粋な意味での英春流ではないように見えますが、
例えばこの棋譜→【女流王座戦予選】なんかは、
野原未蘭さんの独特な差し回しをみることができます。
Youtube動画
以下の動画に、ブログの内容を要約しました。
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