【里見香奈 奨励会退会】四段の道は?三段リーグ編入試験とプロ編入試験がある!

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昨日行われた三段リーグで連敗し、今季のリーグで勝ち越しの目がなくなったことで、奨励会を退会することになった里見香奈三段。女性初の将棋プロ棋士(四段)への挑戦が残念な結果に終わってしまいましたが、まだ可能性が残されています。ご本人がその道を選ばれるかどうかはわかりませんが、残る方法「三段リーグ編入試験」「プロ編入試験」について解説しました。

里見香奈の四段への挑戦と奨励会の退会

女性初の三段

将棋のプロ棋士(四段)になるには、半年に1度(6ヶ月間)開催される三段リーグで原則上位2名に入る必要があります。

関連記事:【三段リーグ】プロ棋士四段の仕組みや年齢制限は?藤井聡太の成績と里見香奈の挑戦は?

通常の場合、プロ棋士の養成機関である「奨励会」には6級で入会し、所定の成績をおさめて昇段していきます。

そのトップが三段で、三段同士で行われる三段リーグには現在36名が在籍しています。

里見香奈さんは、2013年12月に、女性として初めて三段への昇段を果たしました。

途中1年半の体調不良による休場を挟んで、三段リーグでの挑戦を続けていました。

年齢制限による奨励会退会

三段リーグは36名のうち上位2名のみプロ棋士になれるという超難関ですが、半永久的に在籍できるわけではなく、以下のような年齢制限があります。

満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなかった場合は退会となる。

出典:日本将棋連盟

里見さんは今年の3月に満26歳の誕生日を迎えるので、今回が最後の三段リーグだったのです。

なお、年齢制限には以下のような例外規定もあります。

最後にあたる三段リーグで勝ち越しすれば、次回のリーグに参加することができる。

出典:日本将棋連盟

つまり、最後の三段リーグではあったものの、勝ち越し続ける限りは「満29歳の誕生日のリーグまで」という制限はあるものの、残留できたのです。

しかし、残り2戦で負け越しが2となり、仮に最終日を連勝したとしても9勝9敗で「勝ち越し」ができなくなったため、退会が決まってしまいました。

残された可能性1 三段リーグ編入試験

三段リーグ編入試験とは?

「三段リーグを通らずにプロになる道」は原則なかったのですが、瀬川晶司さん(現六段)が2005年にプロ編入の嘆願書を提出し、プロ試験の末合格したことがきっかけとなり、以下の2つの制度が整備されました。

  • プロ編入試験
  • 三段リーグ編入試験

このうち三段リーグ編入試験とは、二段の方々と8局対局して6勝すれば合格できる試験で、合格できれば二段に落ちない限りは、最長で4期「三段リーグ」に在籍することが可能です。

里見香奈さんの場合

里見香奈さんは6級から奨励会へ入会する通常のパターンではなく、編入試験で1級からスタートしました。

その後、三段まで実力で登りつめています。

奨励会大会後どのような意思決定をされるかはご本人の意思次第ですが、「実力」「実績」という客観的な指標から見て、「三段リーグ編入試験」の道を選べば、三段リーグへ復帰することは十分可能と思われます。

残された可能性2 プロ編入試験

プロ編入試験とは?

上述の通り、瀬川晶司さん(現五段)のプロ入り嘆願の件がきっかけで整備された制度の1つです。

具体的には、以下の要件を満たせばプロ四段になることができます。

まず受験資格は以下のようになっています。

プロ公式戦において、最も良いところから見て10勝以上、なおかつ6割5分以上の成績を収めたアマチュア・女流棋士

出典:日本将棋連盟

現在のアマチュア将棋界と女流プロの世界では、一定の成績をおさめる(「タイトルを獲る」など)と将棋プロ公式戦へ参加する権利を得ることができます。

プロ棋士が相手なので厳しい戦いですが、「プロと互角以上に戦えるなら、試験を受けてもいいよ」という趣旨の制度です。

この受験資格を満たした後の試験は、以下のようなものです。

  • 棋士との5番勝負(試験官は新四段5名を棋士番号順に選出)
  • 5対局中3勝で合格

出典:日本将棋連盟

つまり、直近でプロ棋士になった5名を相手に3勝をあげられたら合格です。

但し名人挑戦者決定リーグである順位戦の一番下のリーグC級2組への参加は認められず、フリークラスからの出発になります。

この道を通った場合のフリークラスには「10年以内にC級2組へ昇級しないと引退」という「制限時間」がついており、昇級のためには、以下の成績をおさめないといけません。

良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上

出典:日本将棋連盟

以上を要約すると、以下の3つのステップを経て、初めてプロ棋士四段になれるのです。

  1. 女流プロ/アマチュアでタイトルを一定数獲る
  2. プロの公式戦で10勝&6割5分以上勝つ
  3. プロ四段を相手に5番勝負で3勝以上

将棋が強いことが前提ですから、1つ目の条件もさることながら、2つめと3つめの条件が非常に厳しいといえます。

過去の事例 今泉健司さん(現四段)

今泉健司さんは元奨励会三段で、年齢制限による退会後、三段リーグ編入&再退会を経て、プロ編入試験を受験・合格という、苦労を絵に描いたような道を辿って、プロ棋士四段の夢を叶えられた方です。

前述の条件に当てはめると、以下のようにクリアされていきました。

条件 今泉健司さんの場合
アマチュアで一定の成績 アマ大三冠(アマ竜王、アマ名人、朝日アマ名人)達成
プロとの対局条件 プロ公式戦で10勝4敗(勝率0.714)
プロ四段との5番勝負 3勝1敗(4局時点で合格)

この後、フリークラスの卒業条件も満たし、現在は順位戦C級2組で上位を争っています。

関連記事:【将棋順位戦】昇級と降級の仕組み知ってる?A, B1, B2, C1, C2別に解説、段位との関係も!

里見香奈さんの場合

女流棋界では圧倒的第一人者(タイトル6つのうち5つを制覇中)なので、1つ目の条件は問題なく満たすと思います。

問題は2つ目と3つ目です。

里見香奈さんがプロ編入試験を受けるには、2つ目の条件(プロの公式戦で10勝&6割5分以上勝つ)をクリアするのに、一定以上の時間が必要です。

前述の今泉健司さんの場合は、2つ目の要件を満たすためだけにほぼ2年半を要しています。

今後里見香奈さんがどのような選択肢を取るのか、注目しています。

将棋界に関するあらゆる情報を発信していきます。

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