将棋順位戦とは、名人の挑戦者だけでなくプロ棋士の格・ランクを決めるリーグなので、毎年様々な人間ドラマが見られます。ファンの注目度も高いので、「昇級」「降級」(降級点)そして「段位との関係」を知りたいという声も多く聞かれます。今回は、「順位戦の仕組み」にフォーカスを当て、A級・B級1組・B級2組・C級1組・C級2組別に昇段の仕組みとともに解説します。
目次
将棋順位戦とは?昇級と降級・降級点
昇級
毎年4月に開幕する順位戦で、上位2名(C級2組の場合は3名)に入ると上のリーグへ上がれます。
昇級すると名人挑戦者決定リーグ(A級)に近づくだけでなく、棋士の格も上がるので、ファンだけでなくプロ棋士にとっても関心の高いトピックです。
降級と降級点
所属するリーグで下位2名に入ってしまうと、下のリーグへ降りることになります。
ただこの仕組みはB級1組以上に言えることで、B級2組以下は1年成績が悪いだけでは降級はしません。
「降級点」という制度があって、降級点が所定の回数たまると、下のリーグへ降級となってしまいます。
段位との関係は?将棋の昇段の仕組みと条件は?
最近は「プロ棋士の実力を正しく示していないのでは?」という指摘もありますが、現在でも棋士の格を示す指標として「段位」があります。
昔は「九段=名人」「八段=A級棋士」という暗黙の前提がありましたが、昇段制度に勝ち星基準が導入されて、この前提は崩れてしまいました。
全ての規定を書くとキリがないので、昇級・タイトルに関する昇段規定の要約を以下にまとめました(日本将棋連盟ウェブサイトより)。以下の条件を満たせば、その段位へ昇段できます。
- 九段:竜王2期、名人1期、タイトル3期
- 八段:竜王1期、A級昇級
- 七段:B級1組昇級
- 六段:B級2組昇級、五段で全棋士参加棋戦優勝
- 五段:C級1組昇級
- 四段(=プロ棋士デビュー):三段リーグの上位2名又は3位2回
藤井聡太七段は、C級1組へ昇級したので五段へ昇段し、朝日オープン杯で優勝したことで六段へ、そして竜王戦ランキング戦で2期連続昇級したことで七段へ昇段しました。
詳しくは、以下の記事で解説しています。
昇級降級制度は今のままでいい?
昇級する人数が2名〜3名なのに対しB級2組以下は降級速度が遅くなるように設定されているため、下のリーグほど下図の通り所属人数がかなり多くなっています。
A級 | 10名 |
B級1組 | 13名 |
B級2組 | 24名 |
C級1組 | 39名 |
C級2組 | 49名 |
タイトル戦で上位へ進出すると収入も伸びますが、ごく限られた棋士が進出しているので、所属するリーグの高低が収入に直結します。
そういった背景もあって降級しにくい仕組みが作られているのかもしれません。
この表には書かれていませんが、プロ棋士目前の人たち(三段リーグ所属)の人数も36名と、下のクラスに行けば行くほど大勢の人数が在籍しています。
理由の一端は、降級してくる人たちが少ない(=昇級者を増やすと、上のリーグがだぶついてしまう)ことにもあるでしょう。
将棋界の収入が飛躍的に増えないならば、棋士が増える・上位棋士が増えると、収入が減ってしまう人も出てしまいます。
しかしファン目線からは、やはり「順位戦所属リーグ=実力」と考えるのが自然でしょう。
その仕組みに歪みが出てくる降級点の制度は、縮小・廃止とするのが望ましいと考えます。
勝負の世界である以上、より強い者が報われる制度であるべきです。
将棋順位戦の仕組み
A級とは?
通常は10名が所属して総当たりでリーグ戦が行われ、トップになった者が、名人への挑戦権を手にします。
一方、下位2名になると、B級1組へ降級となります。
10名なので通常は1年間で9戦行われますが、残り2局は全員が同日に一斉に対局します。
特に、誰かがブッチギリで勝ち続け(負け続け)ない限りは、最終日は「名人挑戦者」「B級1組への降級者2名」が決まるので、とても盛り上がります。
現在の所属棋士は以下の10名です(名人は佐藤天彦)。
出典:日本将棋連盟
2番手の羽生九段と広瀬竜王が最終局で直接対決するので、2敗は必ず1名残ります。
よって、最終局を豊島二冠が勝利すれば名人挑戦、負けるとプレーオフということになります。
B級1組
13名で総当たりリーグ戦が行われ、上位2名がA級へ昇級し、下位2名がB級2組へ降級します。
準トップ棋士が集まるリーグで、一昔前までは「鬼の棲家」とも呼ばれていました。
現在の所属棋士は以下の13名ですが、前期まさかの降級を喫した渡辺棋王が絶好調で、ぶっちぎりで昇級を決めています。
残り1枠を斎藤慎太郎王座等が争っている状況です。
出典:日本将棋連盟
B級2組
上位2名がB級1組へ昇級し、下位4名に降級点が付きます。
降級点が2回付くと、C級1組へ降級します。
逆にいうと、2回成績不振にならない限りは、B級2組を維持できます。
現時点で降級点を持っている棋士は、今期新たに付いた人を含め5名在籍していて、うち1名は降級が決まっています。
出典:日本将棋連盟
タイトル挑戦経験のある永瀬拓矢七段が既に昇級を決めていて、残り1枠を千田翔太六段などが追っています。
C級1組
上位2名がB級2組へ昇級し、下位7名に降級点が付きます。
降級点が2回付くと、C級1組へ降級します。
B級2組と同じように、成績不振が累積2期で降級します。
現時点で降級点を持っているのは14名で、うち2名は降級が決まっています。
出典:日本将棋連盟
注目の藤井聡太七段が全勝でトップを走っていましたが、同じく昇級を狙う近藤誠也五段に負けてしまったことで、4番手へ転落してしまいました。
トップ集団は、近藤五段・杉本七段・船江六段・藤井聡太七段が並走しています。
ブログ記事を更新しました。藤井聡太七段の連勝が止まりました!
「藤井聡太の最新対局速報と勝敗・結果は?」
https://t.co/T5Q4mHCL9D pic.twitter.com/A8gfWfHjUL— 将棋ポケット@将棋ブログ (@shogipocket) February 5, 2019
C級2組
プロ棋士(四段)になると、所属するリーグで、在籍棋士数も一番多くなっています。
そのためか、上位3名がC級1組へ昇級します。
注目の昇級争いは、既に及川六段が昇級を決めているので残り1枠の争いになっています。
出典:日本将棋連盟
降級点は下位10名に付きますが、降級点が3になると、順位戦の枠外(フリークラス)へ転出します。
現時点で降級点が付いている棋士は19名います。
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