佐藤天彦名人に羽生善治竜王が挑戦する将棋名人戦第1局が、18年4月11日から始まります。注目の対局の生中継・戦型・見どころを速報とともにお伝えし、「どうなったのか?」の疑問に余すところなくお答えします。
最新更新:2018/4/12 20:26(羽生竜王勝利)
目次
佐藤天彦名人
名人戦を2連覇中
2年前の名人戦で、羽生善治名人(当時)を4勝1敗で破り、初タイトルを獲得されました。
翌年も、A級順位戦初参加の稲葉陽八段に4勝2敗で勝利し、名人を防衛、2連覇を達成しています。
名人防衛は至難の業
名人戦に挑戦するには、C級2組→C級1組→B級2組→B級1組→A級と少なくとも4年かけて昇級して、さらに1年間かけて行われるA級リーグのトップの成績を納める必要があります。
つまり、一時的に強いだけではダメで、安定的に高い成績を収め続けないと挑戦できないのです。
だから、名人戦の挑戦者は名実ともに「最強の挑戦者」なので、最強の挑戦者を相手に防衛することは、とてつもない偉業なのです。
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戦績は?
キャリアの通算成績は、319勝149敗で勝率は.682です。
デビュー当初は対局相手に強豪が少ないので勝率は高くなりがちですが、キャリアを通じて7割近い勝率を残すのは、トッププロにも勝ち続けないといけません。
まぎれもない将棋トッププロと見ていいでしょう。
なお、2017年度の成績16勝19敗で勝率は.457です。
負け越されていますが、ご本人的に新しい取り組みを進められていたようで、以下のようにコメントされています。
昨年、名人を防衛してから、振り飛車をやったり、雁木(がんぎ)をやってみたり、今までやってこなかったような将棋を意識的に指してみました。正直、なかなか結果が出なかったこともあるけれど内容的にはいろいろな発見がありました。
出典:朝日新聞デジタル
新しい取り組みをすると、どうしても結果を合わせて残すのは難しくなります。
佐藤名人としては、昨年度の負け越しを、自分を大きく成長させるためのチャレンジの対価と捉えられているのでしょう。
羽生善治竜王
タイトル通算100期&名人通算10期に王手
空前の永世七冠など、今後誰も到達できないのではないかと言われている記録を、現在進行形で作り続けている、将棋界の第一人者です。
自身にとって17回目の名人戦出場が、タイトル通算100期&名人通算10期をかける節目のタイトル戦になりました。
羽生さんの名人挑戦に対して、防衛側として臨んだ名人は以下のとおりです。
年度 | 名人 | 結果 |
52期(1994年) | 米長邦雄名人 | 2勝4敗で羽生が名人奪取 |
61期(2003年) | 森内俊之名人 | 0勝4敗で羽生が名人奪取 |
63期(2005年) | 森内俊之名人 | 4勝3敗で森内名人が防衛 |
70期(2012年) | 森内俊之名人 | 4勝2敗で森内名人が防衛 |
71期(2013年) | 森内俊之名人 | 4勝1敗で森内名人が防衛 |
72期(2014年) | 森内俊之名人 | 0勝4敗で羽生が名人奪取 |
76期(2018年) | 佐藤天彦名人 | ? |
羽生さんの挑戦を受けて、防衛を果たしたのは森内俊之九段(十八世名人)しかいないという現実が、羽生さんの名人戦での凄みを、より際立たせています。
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戦績
キャリアの通算成績は1399勝565敗で、勝率は.712です。
勝率7割は、将棋トッププロの証なのですが、それを30年もの長きにわたって維持しているのが、もはや空前絶後といっていいでしょう。
2017年度の前半はタイトルを2つ(王位・王座)失いましたが、一方で竜王を獲得し、二冠を維持しています。
年度成績は32勝22敗で勝率は.593です。
生中継は?
朝日新聞デジタルというウェブサイトで、対局の模様がブログ中継されていますが、ニコニコ生放送で、対局の生放送を見ることができます。
戦型予想
前回のブログ記事で、矢倉・横歩取り3三角型を予想すると書きましたが、9時から始まった対局は、横歩取りに進んでいます。
横歩取りでも戦型はいくつかあるので、どの戦型に落ち着くかは、これからの見どころの一つです。
見どころは?
何と言っても、羽生善治竜王の「タイトル100期&名人10期」なるかvs佐藤天彦名人の「名人3連覇」なるか、でしょう。
なお、羽生さんが今回名人戦で名人になると、自身の記録を更新して「4回目」の名人復位になります。
過去に名人へ復位した人は、羽生さんを除くと2回が最高です(大山康晴、中原誠、谷川浩司、森内俊之が各2回)。
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将棋名人戦第1局の速報
速報(9時50分時点)
挑戦者の羽生善治竜王の先手で、9時に対局が始まりました。
9時50分時点で17手目まで進んでいますが、戦型は前回の見どころ記事の通り、「横歩取り3三角型」へ進んでいます。
速報(15時0分時点)
1日目はゆっくり進行し、2日目に戦いへ突入するのが多く見られるパターンですが、羽生善治竜王が、乱戦模様へと誘導したことで、一気に戦いへと突入しました。
羽生竜王側は佐藤名人の陣地へ竜(飛車のパワーアップバージョン)を送り込み、一方の佐藤名人も馬(角行のパワーアップバージョン)へ侵入させ、挑戦者の王様へ迫ります。
駒の損得は、羽生竜王が飛車を召し取ったのと引き換えに、自陣の金・銀を差し出した格好です。
その後、佐藤名人の王様の近くで、お互いの歩兵同士がつばぜり合いをはじめ、羽生竜王の角行を追い払おうとしています。
速報(17時20分時点)
角行を逃げるかと思われていた羽生竜王は、放置して佐藤陣にと金を作ります。
佐藤名人は約1時間30分の長考で羽生竜王の角行を取り、代わりに羽生竜王はと金と銀将の交換を果たします。
速報(19時00分時点)
挑戦者の羽生善治竜王は、迫ってくる佐藤名人の馬から王様を逃します。
「玉の早逃げ8手の得」という格言があり、良い手とされています。
その後、佐藤名人は「封じ手」(あした指す手を紙に書いて、立会人に渡す)を行い、1日目は終了しました。
注目の2日目は、4月12日の朝9時から再開されます。
速報(2日目 10時00分時点)
封じ手は、羽生竜王の王様のすぐそばに歩兵を送り込む一手でした。
控え室に陣取っている将棋プロたちの中でも候補に上がっていたようで、羽生竜王は歩兵を銀将で捕獲しました。
おそらく佐藤名人の狙いは、銀将で歩兵を取らせることだったのでしょう。
速報(2日目 15時00分時点)
佐藤名人は自陣に角行を配置し、侵入してきた挑戦者の竜を追い払います。
竜が自陣近くに引き上げたのを見届けてから、角行は羽生陣へ切り込みます。
この手は挑戦者の反発を招く可能性がある手だったので、控え室の将棋プロたちからは驚きの声が上がりました。
想定通りの反発を羽生竜王が見せると、佐藤名人はそれを無視して、羽生竜王の王様の退路近辺に歩兵を送り込みます。
羽生竜王は、王様の退路に自分の銀将が立ちふさがってしまう形になり、佐藤名人は追撃の手を緩めません。
速報(2日目 19時00分時点)
攻勢を強める佐藤名人は、羽生竜王の王様を右端へ追い込みます。
その後、一転して自分の王様を銀将で守りに入ります。
どちらが読み勝っているのでしょうか?
速報(2日目 20時26分時点、羽生竜王勝利)
攻守が逆転したら、羽生竜王は早速佐藤名人の王様へ猛攻を仕掛けます。
まずは、歩兵の成り捨てから始まり、飛車を佐藤陣へ打ち込みます。
その後、桂馬で佐藤名人の王様の退路を絞り込みにかかります。
飛車と金将で挟撃形を築くと、羽生竜王は一旦王様を端へ逃します。
佐藤名人は、王様の退路を狭めていた桂馬を攻撃の要ゴマである馬(角行のパワーアップバージョン)と交換しました。
その後も攻撃を続けた羽生竜王に対し、防戦困難とみた佐藤名人は投了し、羽生竜王が第1局を制しました。
第3局は、以下の関連記事で速報しています。
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