里見香奈さんや西山朋佳さんで注目されている女性将棋プロ棋士の挑戦ですが、まだ女性将棋プロがいないのはなぜでしょうか? 男性よりも弱い理由はあるのでしょうか? 筆者は、「女性は弱くない」と思っているので、今日はこの点を考えてみました。
目次
女性の将棋プロ棋士への挑戦
女流棋士との違い
将棋の世界では、男性・女性の区別がないプロ制度(以下「将棋プロ」とします)の他に、「女流棋士」という女性だけに門戸が開かれた制度が別枠であります。
女流棋士の世界では、女性だけが参加できるタイトル戦もあります。
一方で、将棋プロになろうとしている女性が全て「女流棋士」を目指しているのかというとそうではなく、「将棋プロ」にチャレンジしている方もいます。
詳しくは、以下の関連記事で紹介しています。
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加藤桃子初段と中七海1級 初の女性棋士・将棋プロを目指すのは他に誰?
女性の挑戦の歩み
女性の将棋プロへの挑戦(=奨励会での活動)は、里見香奈さんや西山朋佳さんが最初というわけではありません。
具体的なお名前は以下の関連記事で紹介していますが、かなり前からいらっしゃいます。
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女性将棋プロ棋士で一番強い・最強は誰? 女流タイトル戦と奨励会の実績で比較!
メジャーどころでいうと、過去に女流タイトル三冠王を達成したこともある中井広恵さんで、1990年に退会された時点で「2級」まで到達されていました(特例措置の蛸島さんを除く)。
中井広恵さんの後は、以下の3名の方が1級へ到達しています。
- 甲斐智美さん
- 岩根忍さん
- 伊藤沙恵さん
いずれも退会後、女流棋士の世界で活躍されています。
三段まで到達している!
上記の4名の方の後にも女性は挑戦されていて、里見香奈さんが初めて初段・二段・三段への昇段を果たし、西山朋佳さんも続いて三段へ昇段しました。
このように、女性の奨励会員がずっと同じ水準を突破できていないわけでは決してなく、クリアした水準は1級→初段→二段→三段と上がってきているのです。
当ブログでもよく特集していますが、将棋プロになる最大の難関は三段リーグで、今まで女性2名(里見香奈さん・西山朋佳さん)が挑戦されました。
西山さんについては現在も挑戦中で、以下の関連記事で特集しています。
【関連記事】
女性は男性よりも弱い?
女の子が弱いと仮定すると?
脳医学的な見地からの検討は他のブログ記事や研究に委ねて、当ブログでは「弱いという仮説を立てて」、反証する形で考えてみました。
「女性が男性よりも将棋が弱い」と仮定すると、以下のような状況が発生すると思います。
- 同じ段位・級位では、男性の方が勝つ確率が高い
- 奨励会の女性比率が上がらない限り、女性が一定段位以上にはなれない
反証
まず1つ目の「同じ段位・級位」の仮説ですが、これは女性奨励会員が既に三段まで昇段している事実が、一番の反証になります。
奨励会には昇段規定というものがあり、要件を満たさないと昇段できませんし、過去に存在した女性に対してだけの特別昇段規定も廃止されています。
一般の将棋道場と同じく、奨励会でも男性比率が高い中で三段まで昇段しているのですから、「女性は男性よりも将棋が弱い」というのは無理があるでしょう。
次に2つ目の「奨励会の女性比率」ですが、これは細かい数値を持っていないので、女流棋士に転身された方と現在の奨励会員の人数を使って、比率を考えてみます。
氏名 | 段位 | 在籍期間 |
里見香奈 | 三段 | 2011年〜2017年 |
西山朋佳※ | 三段 | 2010年〜 |
加藤桃子※ | 初段 | 2006年〜 |
中七海※ | 初段 | 2011年〜 |
岩根忍 | 1級 | 1995年〜2003年 |
伊藤沙恵 | 1級 | 2004年〜2014年 |
中井広恵 | 2級 | 1983年〜1990年 |
矢内理絵子 | 2級 | 1993年〜2001年 |
千葉涼子 | 2級 | 1994年〜2001年 |
竹部さゆり | 4級 | 1993年〜1995年 |
香川愛生 | 4級 | 2009年〜2011年 |
今井絢※ | 5級 | 2016年〜 |
礒谷祐維※ | 7級 | 2017年〜 |
1990年代は4名、2000年代前半は3名、2000年代後半は3名、2010年代前半は6名、2010年代後半は6名です。
この表には含めていませんが、女流棋士にはならなかった方・まだなっていない方もいます。
推移を見てみると、2010年代に入ってやや増えましたが、奨励会員全体の人数に比べると変動は微増程度と言っていいでしょう。
つまり、奨励会員の女性比率が飛躍的に上昇したわけではないにもかかわらず、女性奨励会員のトップ段位が1級→初段→二段→三段と上がっていった事実は、反証に十分と言えると思います。
将棋プロ棋士がいない理由は?なぜ?
単に競技人口数の違いでは?
将棋の適性・能力に男女差はないとすれば、なぜ女性将棋プロ棋士が誕生しないのでしょうか?
筆者は理由を、「単に競技人口の男女差の違い」にあると思っています。
将棋の道場や大会に行かれたことがある方なら感じられると思いますが、将棋をしている人数はやはり男性の方が圧倒的に多数です。
奨励会員の比率も、同じく男性が圧倒的です。
例えば関東奨励会に比べて人数の少ない関西奨励会を見ても、54名中女性は3名で6%にすぎません。
将棋の競技人口のうち、男女共一定の比率で将棋プロ棋士が誕生すると仮定すれば、94%を占める男性からだけ将棋プロが出ている現実は、決して不自然な数値ではないでしょう。
いつ女性将棋プロ棋士が誕生するか?
おそらく時間の問題だと思っています。
それは、女性奨励会員の人数が飛躍的に伸びたわけではないにもかかわらず、女性のトップが三段まで到達している(しかも複数名)という現実があるからです。
異論はあるかもしれませんが、以上が筆者なりの考察です。
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